Category記事カテゴリー

メールマガジン

Vol.80 大阪市道路公社解散に思う

○1.近畿圏以外の方にはなじみがないと思いますが、先日大阪市道路公社(駐車場事業を行っている)解散の報道がありました。

公社のHPによると、2013年10月9日に大阪市において今年度末での解散に向けて手続きを進めることが決定されたとのことです。

市議会の同意が必要とのことですがおそらく同意されるでしょう。

この話題を取り上げたのは橋下市政をうんぬんすることが目的ではありません。

この報道に際して私が感じたことを書いてみようと思います。

〇2.まず、そもそも市やその外郭団体が駐車場管理をすることが行政活動の一環として妥当だったのかどうかという論点があるだろうと思います。

昨今「小さな政府」とよく言われますがそのような観点からこのような問題提起はあり得るだろうと思います。

その意味で昨今の自治体駐車場の民間移管(事業者公募、指定管理者制度等)は大きな方向性としては間違っていないと思います。

勿論私は何でもかんでも民間移管(民営化)をすればよいという馬鹿な考えは持っていません。

市場原理を信奉し、市場に委ねておけば何事もうまくいくと考えるのは悪しき原理主義者としか言えません。

民間移管(民営化)は分野ごとに、個別案件ごとに詳細にその適否を検討していく必要があるのではないかと思います。

駐車場事業ひとつとっても、単純に民間移管(民営化)が正しいとは言えません。

確かに殆どの駐車場事業は民営化した方が良い=行政やその外郭団体が係らない方が良い、ということは事実だと思います。

しかし私は、むしろ行政が積極的に行うべき駐車場(関連)事業というものがあるのではないかと思っています。

ではそれはどういうものか。

企業というものは、最終的には収益を上げることを主たる目標とします。従って、収益性の無い、でも社会的には有意義な事業を長期に亘って継続することはできません。

当たり前ですがそんなことを続ければ倒産するからです。

私は、収益性が不透明でしかも公共性の高い駐車場事業で、なお且つ将来の都市交通を改善するための起爆剤になり得るような事業であれば、積極的に事業を行うべきだと思います。
しかも民間の知恵や技術を積極的に取り入れて。

つまり企業というものは投資をするときに当然ながら収益性を一番に考えます。

いくら社会にとって望ましい貢献度の高い事業であっても、収益性が低ければ、あるいは収益性が相当に不透明な場合には基本的
に取り組むことはしません。
特に莫大な投資を必要とするものについては。

例えば私は常々、都市ターミナルとしての駐車場という考えを持っています。
単なる箱ものとしての駐車場ではなく、円滑な都市交通の結節点としてのターミナル。
そこには駐車場も含まれますが、駐バイク場や、駐輪場、更にはシェアリング施設(自動車、自転車、バイク)等も含む施設で、
しかも都市内循環バスの停留所も兼ねたような施設です。

このような施設であれば都市内の「駅」の様な位置づけの施設が生まれることになり、都市交通問題の抱える課題を解決する一助になるかもしれません。

これに拘る必要は全くありませんが、行政であるからこそ取り組める駐車場関連事業というもののはずです。

そして採算性が見えるような状況になってくれば行政として民営化し、民間企業はそれをビジネスチャンスとして活かし、新たなマーケットを創出していくという循環になれば、官民の望ましい連携といえるのではないでしょうか。

端的に行ってしまえば、
投資効率は相当に不透明だが、社会的には非常に有用な実験的な先端的事業を、民の知恵と技術、官のリスクテイキングで取り組むこと、それは新しい公共事業の一つの形態かもしれません。

〇3.話は少しそれますが、
最近報道された、大阪市の公立学校民営化の話には相当に疑問があります。
そもそも教育の論理は、市場原理と相容れないものです。

私は教育を神聖視する気は毛頭ありませんが、市場と教育の場ではそこで働く原理は異なる、というよりむしろ相反すると考えています。

市場は、端的に言えば効率が支配する場であり、徹底的に合理性が追求されます(この考え方自体最近は色々なところで疑問や批判が出始めてはいますが・・・)。

教育が目指すべきは、子供それぞれが異なることを前提にした上で、それぞれの成長速度や個性に合わせて基礎技能や知識を習得させ、自立した社会の成員になりうる素地を育てることです。

当然ながら効率に反したり、必ずしも合理的でないことも行われます。
子供は工場で作られる均質な「製品」ではないのですから。

民間活力を利用すること自体は決して間違ってはいないと思いますが、その手法はいろいろなものが考えられる筈で、一足飛びに民間への運営委託というのは単純に過ぎます。

公営交通事業の民間移管とは次元が異なります。

そう考えると一口に民間移管(民営化)といっても実に多くのことを考えなければいけないことが分かるはずです。

世の中には本当に複雑な問題をバッサリ単純化し、本質を捻じ曲げてでも分かり易いキャッチフレーズで自説を押し通そうとする
政治屋(国や自治体のあらゆるところにいます)がいますが注意しないといけませんね。

大切なのはキャッチフレーズに惑わされることなく、少し冷静になって自分の頭で考えてみることです。そうすれば見えてくることがたくさんあります。

何か、話がそれたまま戻れなくなってしまいましたが、たまにはこのようなお話も許されるかなと思いつつ、今回はこの辺にしておきます。

相当に長くなりました。申し訳ありません。

今回もお読みいただき誠にありがとうございました。

 

△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△

○【次号予告】 次回11月号のテーマは未定です。