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Vol.42 民主党政権の誕生と私たちの生活

○1. 今回は、民主党が総選挙で圧勝し鳩山政権が誕生しましたので、このテーマについて少し考えてみたいと思います。

民主党政権の誕生は、そのマニフェストだけを見れば選挙による「革命」ともいえる政治現象だと思います。

民主党のマニフェストを見ると、政治のあり方を本質的に変えていこうという志向があります。

特に彼らが言うところの「脱官僚依存」を本当に実行することが出来るのなら、それは明治維新にも匹敵するものでしょう。

どこまでその意思を貫くことが出来るかは未知数ですが、非常に閉塞感の強い現下の社会状況の中で期待するところも無いわけではありません。

政治信条や思想がどうであるかに係わらず長年の自民党政治における膿はこの際すっきり吐き出して欲しいものです。

また民主党の基本政策・思想(確固としたものがあるのかどうかも良くわかりませんが)がどのようなものであるかに係わらず政権与党である
わけですから、その政策が経済活動に大きな影響をもつことは当然のことです。

○2. 民主党の政策の中で我々に大きな影響があるのではないかと思われるもののひとつに「高速道路料金の無料化」があります。

首都高や阪神高速等を除き、全国で段階的に進めていくということですが、本当に色々なこと(たとえば渋滞回避策)が事前に検証されているのかなという不安は無いわけではありません。

高速道路会社やフェリー会社、鉄道会社のトップなどが異論を唱えるのは、深い利害関係のある企業として当然のことでしょう。

しかしこの手の政策は国民生活の全体と係わる問題をたくさん孕んでいると思います。

関連企業の利害を中心に議論をすると大切な問題が抜け落ちていくような気もします。

本来であればこのような多岐にわたる問題と係わる政策は十分に議論したあとで合意形成すべきものではないのでしょうか。

問題提起の仕方や課題の煮詰め方、国民・企業などの意見集約等の局面において十分な議論が尽くされたと考えるには疑問が残ります。

○3. 民主党は他にも自動車関連税制において暫定税率の廃止なども公約として掲げていますが、
私は個別の問題よりも、民主党が政策決定の過程を根本的に変えようとしているところに強い関心があります。

明治以来、日本の官僚制が、先を走る「欧米列強」というお手本を目指して進めた近代化の大きな歯車として機能してきたことは異論の無いところです。

その優秀さ、安定性、機動性など卓抜した面を多く持つことは間違いありません。

しかし「官僚制」というのはあくまでも効率性に係わる制度であり、明確な目標が見えており、そこへ向かってどのように政策を立案したら効果的か、という場面で力を発揮するものです。

けれども金融危機後の視界不良の経済状況の中、何をすべきかもはっきりせず、動き出すべき方向性すらなかなか定まらない状況で、官僚制が力を発揮すると考えることは間違っているのではないでしょうか。

官僚制は、テクニカルな問題の処理には長けているでしょう。

でも、難しくいえば、今は大きく社会全体として何を目指し、何を守り、何を切り捨て・・・というような哲学的な或いは理念的なイニシアティブが求められる時代です。

その意味で官僚に丸投げするのではなく、政治家がその責任において判断し、決定していくのは当然のことと言えます。

また私たちもマニフェストをよく読み、主体的な投票行動を起こすことが求められるのです。

企業活動の分野においても
政治や行政の枠や規制の中に活路を見出すのではなく、自らの知恵と努力で新しい地平を切り開いていくことが求められる時代なのでしょう。

本当に厳しい時代になっていくでしょう。

今まで先送りにしてきた難しい問題にも結果を出さなくてはいけない時代になっていくでしょう。

しかし新しい時代への産みの苦しみと思えばまた楽しくもあるでしょう。

今回もお読みいただき誠にありがとうございました。

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○【次号予告】 次回10月号は、「逆境に生きる 7」です。